「いかん!レイモンド、あの町は危険だ!!」

「不可解な手紙と言い、エドの様子といい、気になって放っておけません。それに、かつて住んでいた町です。見物がてらに行って来ますよ」

「だが、君までおかしくなってしまったらどうする。あの町は、そんな生易しい観光地じゃない」
呪文を唱えている内に、ぞくぞくと背筋が寒くなってきた。
こんな地下に風が流れよう筈も無いというのに、カンテラの炎が揺らめき始めたではないか。
だが、おかしいと止めることは出来なかった。
今、ここで詠唱を中断すれば、もっと恐ろしいことが起きる。
何の根拠もないが、そんな予感が私の口を動かし続けた。

「ヨグ=ソトース……」
「…どうしました?」

メモを見て硬直している私を、男が不審な目で睨んでいた。
私は慌ててその紙切れを元通りのポケットに突っ込み、改めて財布から一ドル紙幣を取り出し差し出した。

「はい、確かに。ようこそ
ギルマンハウスへ。ああ、言っときますが、部屋に水道は通ってないので風呂を使いたきゃ廊下の奥にありますからご勝手に」